企業分析

トヨタ自動車(7203)のEV戦略と今後の動向を解説

ヨーロッパをはじめ、世界にある車は今、EV(電気自動車)へと徐々にシフトして行っています。

そんな中、EV遅れと言われていた国内大手のトヨタ(7203)がEVを次々と打ち出す戦略や商品リリースをしています。

この記事では、こうしたトヨタのEVの戦略と動向、そしてどうなっていくのか考察していきます。

トヨタの多彩なEV戦略

国内でも最大手の自動車メーカーが「トヨタ」です。

トヨタの売上は29兆9299億円、販売台数は全世界で895台です。

https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/financial-results/2021_4q_presentation_jp.pdf

そんなトヨタは、どんなEV戦略を取っているのでしょうか。

トヨタは、2021年5月の決算報告会の「トヨタの戦略とカーボンニュートラルへの コミットメント」にてトヨタが今後行うEVについての説明がありました。

https://global.toyota/jp/ir/financial-results/archives/

その中でトヨタは、EVを「電気自動車」ではなく「電化車両」と定義づけ、多種多様なEVを送り出すことを発表しています。

トヨタのEVの種類は、以下の4種に定義されています。

HEV

BEV

PHEV

FCEV

それぞれ、解説していきましょう。

HEV

HEVは、Hybrid Electric Vehicleの略で、現在と同じハイブリッド車を意味します。

BEV

BEV(Battery Electric Vehicle)はバッテリー型電気自動車のことで、2022年から発売予定のbZ4Xをはじめ、4モデル投入される予定です。

PHEV

PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)は、プラグインハイブリッド車のことを意味します。

PHVがHEVと異なるのは、「電気部分を自宅で充電できること」です。

通常のハイブリッド車(HEV)の電気部分は、ブレーキなどで蓄電しています。

ガソリンで走りながら、充電しているのです。

しかし、PHVは、電気自動車のように、自宅などで充電も可能なため、ハイブリッド車と電気自動車の良いとこどりをしているイメージです。

また、PHVのメリットは、なんといっても燃費の良さです。

ハイブリッド車に比べて、電気だけで充電して走行も可能ですし、充電が切れてもガソリンでも走れます。

トヨタでは現在、後述するPHEVが2種類販売されています。

FCEV

FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)は、燃料電池で発生させた電気で動く車のことです。

ガソリンや電気の代わりに水素を充填させ、空気中の酸素と反応させて発生した電気を動力源としています。

トヨタが出しているFCEVは、後述する「ミライ」が代表的なものでしょう。

水素燃料電池車のメリットは、以下の通りです。

ガソリンの2倍のエネルギーで走れる

・電気自動車より航続距離が長い

電気自動車よりもエネルギー補給時間が短い

水が出るだけなので、二酸化炭素を排出しない

デメリットとしては、自宅などで気軽に充電などができないのがデメリットとなります。

経済産業省によれば、FCEVに水素を充填することができる水素ステーションは、全国に137箇所しか存在していません。

水素ステーションが少ないままだと、せっかくFCEVを購入したとしても水素を充填できないですから非常に不便ですよね。日本においてFCEVが普及するためには水素ステーションの普及が第一になります。

とはいえ、脱炭素化に貢献する車であることは間違いなく、今後の開発次第で大きく普及しそうな夢の車両です。

トヨタが現在販売しているEVは?

トヨタは厳密には完全なるEVを発売しておりません。

トヨタが現在販売しているのは、PHVとFCEVです。

PHVは、以下の2種です。

  • RAV4 PHV
  • プリウスPHV

RAV4 PHV

トヨタのRAV4は3種類のグレードに分かれたSUVで、見た目もカッコよくアウトドア仕様です。

価格帯は540万~470万円です。

航続距離はEPAによる認定で、電気のみでの走行で67.6kmです。(ガソリンならおよそ1,200km)

※EPAとは、アメリカ合衆国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency)のことを指します。

EPAは、審査基準が厳しいことが有名で、カタログの走行距離と実際の走行距離の乖離が一番小さいことで有名です。

プリウスPHV

プリウスの進化系で、PHVになった新型のプリウスです。

価格帯は、320万~360万で、電気のみでの走行でEPAの航続距離は40kmです。(ガソリンのみではおよそ1,500km)

ミライ

トヨタが出しているFCEVは、「ミライ」のみです。

ミライの価格は700万であり、航続距離が600kmのセダン型の水素燃料電池車です。

水素補給がわずか3分で、600kmも走るので、1日充電がかかる電気自動車よりも手間がなく、航続距離も同時期の発売されている電気自動車よりも長いです。

トヨタが今後出すEV「bZ4X」

トヨタは、2030年までにをグローバルで30車種の純EV車を投入し、2030年にはEVの販売台数350万台を目指しています。

その最初ともいえるのが、2022年に発売されるBEVの「bZ4X」です。

bZ4X が1回の充電で走れる距離は最大でなんと500kmです。

これまでのトヨタの電気自動車の中でも高い航続距離を誇るため、今後トヨタの主軸になりそうなEVですね。

bZ4Xは日本だけでなく、北米、中国、欧州などEV需要の高い地域にも販売に力を入れる予定で、新たなトヨタの主力商品となるでしょう。

トヨタの今後のEVはどうなるのか?

トヨタの戦略とは?

トヨタは、完全なEVも今後出していきますが、戦略としては、ハイブリッド車も水素燃料電池車も電気自動車も並行して出すという「全方位戦略」をとっています。

その理由は、電気自動車開発に限らず、あらゆる技術の可能性を探っていくことで、自動車メーカーのトップの地位に君臨し続けたい狙いがあるからです。

水素自動車の開発を続ける理由

トヨタはあらゆる可能性を考慮し、「全方位戦略」を推進しています。現在の主流といえば、電気自動車にはなりますが、そちらも開発しつつ水素自動車も諦めていません。例えば、水素による燃料電池車FCEVを200万くらいの手頃な価格で販売でき、ガソリンスタンドで気軽に水素補給ができれば、電気自動車並みに普及していくことでしょう。

しかもFCEVなら、電気自動車よりも航続距離を伸ばしやすいメリットもありますし、消費者がどのような車を好むかはわかりません。

「将来的にどのような車が普及するのかは答えは消費者が持っている」という考えのもと、自動車開発を進めていることが読み取れます。

最後に

電気自動車の台頭、自動運転技術の開発、カーシェア事業の出現など自動車業界は大きな激変期にあります。

その中においてもEVやFCEVなどをトータルな開発姿勢から今後の企業成長も大幅に期待できることでしょう。

今後のトヨタのEVやカーボンニュートラル戦略の動向から目が離せません!

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